東京大学の総長「学びのススメ」「おもしろい!」をつきつめる

「これから」に向けて、小学生はいまのうちからどのように勉強と向き合えばいいのか――。東京大学のトップである五神真総長に自分の体験をまじえて教えてもらいました。保護者にも役立つヒントがもりだくさんです。(編集委員・沢辺雅俊)

ごのかみ・まこと 1957年、東京都生まれ。狛江市立狛江第三小、狛江第二中、私立武蔵高校(東京)を経て、東京大学理学部や同大大学院で学ぶ。レーザー光を用いた物質の量子現象を研究。同大教授で2015年から総長

枠から外れたものと出あおう

――小学生は、どう学んでいくといいですか。また、親はどうサポートすべきでしょうか。

さまざまなことに好奇心を持ち、「おもしろい!」と感じて取り組むのが、人生をいきいき過ごすうえでは大事。そう感じることをつきつめるといいでしょう。

世の中は一層かわっていきます。予期していなかったことが到来したときも「いやだな」と思うより、「ワクワクする」と思えるような子どもに育つよう、ガイドできるといいですね。子どもが「おもしろい!」と目をかがやかせたとき、それをはげます姿勢が大切です。

――保護者の姿勢もカギになるのですね。

世の中が大きくかわっていくなかで、子どもたちだけに「これからの時代をがんばって支えてください」というのは理不尽です。変化を楽しむ子に育てるのなら、親も親なりに変化を楽しむ。「いまさら英語はできない」というお父さんやお母さんも「やってみよう!」という姿勢を見せたり、知的なゲームで子どもと競争してみたり、新しいものへの挑戦を楽しんでください。未来型の人を育てるうえで、その姿勢を見せることが大事です。

「自分の時代はこうだった」と枠にあてはめて、ひたすらトレーニングさせるだけではよくありません。社会がどうなるか、道筋はだれにも見えていないので、そこに解決策はありません。

――中学や高校に進んだら、どう学ぶべきですか。

受験勉強に直接関係のない学びや体験も大事にしてください。決められた枠のなかで競うのが入試ですが、最近は受験勉強を効率よく支援するためのしくみが高度になっています。テクニックを身につけるには便利ですが、それだけでなく「枠から外れたもの」に出あうことも大切です。

大学では研究は決まったゴールがなく青天井。社会に出たら、はげしい変化に対応していかなければなりません。そのためにも枠から外れて模索するプロセスが重要です。近道ばかりでは学べないこともあります。

たとえば課外活動をいろいろやってみる、海外に出かける機会があれば行ってみる、科学オリンピックに出てみる……。異質なものを経験するチャンスをいかせるといいですね。

東大は主体的な経験を重視

――子どものころに夢中だったことはありますか。

小3のころは「つり」にこりました。どんなしかけならつれるか工夫し、毎日のように近くの多摩川に通いました。20センチぐらいのフナがつれたら、学校の水槽に放っていました。

中高生のころはアマチュア無線が好きで、機器の自作もしていました。つくるうちに電波はどう伝わるのか、きちんと理解したくなります。高校の物理では足りず、大学の教科書や専門書を見て勉強しました。回路や機械工作の経験は大学院で研究を始めるときに大いに役立ちました。

――東大ではどんな教育を心がけていますか。

いろいろなものにふれるチャンスを増やすことです。入学後に1年間休学し、長期間の社会体験活動をするプログラムも用意しています。主体的な経験は、あたえられる勉強よりも一見効率が悪いかもしれませんが、学びの定着効果は高いのです。

東大には、フロントランナー(先導者)として新しいことを次々につくっていく野心的な人が集まっています。新しいことをどんどん生み出して世界に発信する場であり続けなければならないと思っています。

【朝日小学生新聞2018年1月28日 掲載】