今春の受験の動きを専門家に聞く 大学入試改革見すえ私立人気

2017年度の中学入試が終わりました。今春はどのような動きがみられたのでしょうか。首都圏と関西地区について、専門家に聞きました。(編集委員・大島淳一)

首都圏 公立中高一貫で高倍率

進学塾・栄光ゼミナールによると、首都圏(東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県)で私立中・国立中を受験したのは4万6千人ほど(速報値)。前年度とほぼ同じ規模でしたが、小学6年生の児童数が少なくなったことから受験率はやや上がり、15・7%になりました(前年度は15・5%)。大幅にのびているわけではありませんが、ここ数年、受験率が上昇する傾向を示している理由について、栄光ゼミナール入試サポート部の山中亨さんは2020年度からの大学入試改革を引き合いに出します。

入試改革を念頭において「思考力」や「表現力」をみる試験をとり入れるなど、私立校が「フットワークの軽さ」をアピールする一方、公立校は「腰の重さ」がめだち、何も情報を示してくれない――。保護者はこうした印象をもっているのではないかと、山中さんは考えます。教える内容などの基準を示す学習指導要領がかわらないと、公立校では大きな変化を望めず、私立校への「期待値」があらわれているといいます。

ただし、学校独自の取り組みをおこなう公立中高一貫校は事情が異なります。今春の入試で注目されていたのが、この春に開校する神奈川の公立中高一貫校、横浜市立横浜サイエンスフロンティア高校附属中の動向。高校はスーパーサイエンスハイスクール(SSH)やスーパーグローバルハイスクール(SGH)に指定され、特色ある教育に取り組んでいます。募集定員は80人(男子40人、女子40人)。2月3日の適性検査には659人(男子433人、女子226人)がいどみ、80人が合格、8・2倍(男子10・8倍、女子5・7倍)という高い倍率でした。

こうした人気ぶりは神奈川県内にある私立校に影響をあたえました。横浜サイエンスフロンティア高校附属中と同じ日に入試をおこなった男子校の浅野中が一例。前年度の受験者は1536人でしたが、今春は1401人で130人あまり減少。倍率も2・5倍から2・3倍になりました。

入試改革ではいまの大学入試センター試験にかわる「大学入学希望者学力評価テスト(仮の名前)」が導入されます。しかし、中身がイメージできず、大学にエスカレーター式に進める大学付属校をめざすケースがぐんと増えるのではないかとみられていました。

大学付属校で前年度より受験者が増えたのは東京・青山学院中等部や東京・学習院女子中等科など。明治大系(東京・明治大学付属明治中など)が人気を集める一方、早稲田大系(東京・早稲田実業中等部など)や慶応大系(神奈川・慶応普通部など)はそれほど増えなかったり、前年度より受験生が少なくなったり。山中さんは「学力が上位の層では国立大学への進学を視野に入れて難関校をめざす受験生が多かったのでは」ととらえています。

関西 難関校への挑戦が増える

日能研関西本部の調べでは、関西地区(京都、大阪、滋賀、兵庫、奈良、和歌山の2府4県)の私立中を受験したのは1万6800人あまり(入試開始日の午前入試)。前年度より400人近く少なくなりましたが、首都圏と同じように6年生の数が少なくなり、受験率は9・2%から9・3%に上がりました。

今春の大きな動きとしてとらえられていたのが大阪・高槻中の共学化です。前年度までは男子のみでしたが17年度はA日程で男子を90人、女子を45人、B日程で男子を85人、女子を40人募集しました。女子の結果をみると、A日程では163人が受験して59人が合格(2・8倍)、B日程では241人が受験して81人が合格(3・0倍)。女子の募集は初年度にもかかわらず、多くの受験生を集めました。この影響を受けたのが大阪の女子校、四天王寺中。日能研関西本部によると前年度にくらべて90人近く、受験生が少なくなりました。

17年度の入試の特徴として、日能研関西本部の森永直樹さんが挙げるのが「難関校への人気」です。男子では兵庫・灘中の受験者が前年度の639人から667人に増加、奈良・東大寺学園中は834人から894人、京都・洛星中(前期)は425人から478人と、それぞれ増えました。女子では高槻中もふくめ、兵庫・須磨学園中といった共学の進学校が人気だといいます。

大阪府立では初めてとなる併設型の公立中高一貫校で、この春に開校する府立富田林中は男子が250人、女子は313人が適性検査を受検。合格者は120人(男子54人、女子66人)で、4・7倍(男子4・6倍、女子4・7倍)という「せまき門」でした。15分間のモーニングイングリッシュタイムやディベートをとり入れ、論理的な思考力などをはぐくむ教育をめざします。

東海地区の場合、受験生が多い愛知県では私立中20校あまりの最終的な志願者数は1万1978人で、前年度の1万1357人より600人以上増加、志願倍率は3・6倍でした(愛知県私学協会調べ)。

写真を比較して考える問題も

今春の中学入試で朝日小学生新聞(朝小)の編集部が注目した問題があります。奈良・西大和学園中のものです(札幌・東京・東海・岡山・広島・福岡会場で1月9日実施分)。

2005年と09年に撮影された同じ町のようすを見くらべ、大きく変化している点を答えさせました。09年の写真は電柱が大幅に少なくなっていることから「無電柱化が進められている」ことをとらえ、この取り組みを推進する理由(景観の美化・都市災害の防止・歩行空間の確保など)をもりこみ、合わせて30字以内で記述させました。

この出題に注目した理由は大学入試改革をふくめ、これからの教育の方向性と重なる部分が多いからです。大学入試センター試験にかわるテストでは、記述式で解答する問題がとり入れられ、「40~80字」「80字より長め」といった案が示されています。

西大和学園中の問題を出題通り30字以内でまとめるのはなかなか大変かもしれませんが、朝小では17年1月の紙面で「無電柱化」について解説していました=写真。

【朝日小学生新聞2017年2月19日 掲載】