夏の読書 入試で頻出作品はいかが

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まとまった時間をとることができる夏休みは、読書をするのに絶好の機会です。中学入試でよく出る作品に目を通してみるのもいいかもしれません。この春の入試で題材になった作品のいくつかをとり上げ、どのような問題が出たのか紹介します。(編集委員・大島淳一)

物語文 登場人物の心の動きを追う

今春の入試で複数の学校がとり上げた作品の一つが『サーカスの夜に』。両親と離ればなれになった13歳の少年が家族でみたサーカスの世界に引かれて入団、綱渡りを学びながら成長していく姿がえがかれています。

主人公がサーカスの道化師役の夫婦とともに老人ホームを慰問するという場面から出題したのが兵庫・甲陽学院中や東京・鷗友学園女子中など。病気で片足をうしなった老人を主人公がさすりつづけると、そのからだがやわらかくなっていくことを実感。いっしょに訪問した道化師役から、深い悩みを抱える主人公だからこそ人の心をなごませることができるとはげましを受けるシーンです。2校とも「主人公が道化師役と衝動的に手をつなぎたくなった理由」を記述させました。

中学2年の息子(加奈太)と、その気持ちをとらえることができない父親(征人)が夏休みに父親のふるさとをおとずれ、体験したできごとをえがいた『14歳の水平線』もよくとり上げられました。加奈太の視点と、かつて少年だった征人の視点が交互にとり入れられ、東京・筑波大学附属中や神奈川・浅野中、鹿児島のラ・サール中などが出題。各校で共通するのが登場人物の気持ちについての設問です。

浅野中は「もやもやする気持ち」でいる理由、ラ・サール中は「読まずにはいられない気分」になった理由などを記述。筑波大学附属中は登場人物の気持ちの動きや人物像について計8問、選択式で答えさせました。気持ちが動くきっかけになった言葉や、できごとなどをしっかりとらえる力が求められた典型的な出題といえます。

説明文 記述で問われる表現力

「日本人ならではの個性」「コミュニケーションにかんする問題点」など、説明文ではさまざまなテーマが出題されています。
2016年度の入試で複数の学校がとり上げたのが『科学の考え方・学び方』。最近出た作品ではないものの、宇宙物理学者としても活躍する筆者が若い世代に対して「科学とは何か」をわかりやすい表現で解説しています。

「私にとっての科学」「科学の考え方」「科学はどのように生まれたのか」「未来を担う君たちへ」といった章で構成され、大阪・清風中は科学者の仕事のおもしろさを伝える部分からの出題。問題の文章に傍線が引かれ、その部分についての正誤問題や字数を指定した書き抜きなどをもりこみました。説明文の典型的な出題例です。

東京・東洋英和女学院中学部では筆者の考えを読み取ったうえで「自分の言葉で説明する」という問題を出し、受験生の読解力はもちろん、表現力も問いました。

大学入試を視野に入れた出題も

 朝日小学生新聞(朝小)で読解問題を解説するコーナー「楽読み楽解き 国語の時間」を連載している南雲ゆりか先生に、最近の出題傾向などについて話を聞きました。


入試でとり上げられやすい作品は大きく2種類。入試の前の夏休みごろまでに出た新刊と、新たに文庫になった作品です。中学の先生は夏休みに問題をつくることが多いようなので、秋以降に出版されたものはあまり出ないともいわれています。

内容でめだつのは主人公の成長をえがいた作品です。ここ数年は「他者とのかかわり」に視点がおかれたものがトレンド。「自分はどう生きるか」といったテーマも増えており、今春の『〈自分らしさ〉って何だろう?』はその一例といえるかもしれません。

中学入試でも大学入試を念頭においた問題が増えています。いまの大学入試センター試験や難関の私立大学では、本文全体の内容を選択式で答える問題があります。傍線部分の前後だけを読めば対応できるというわけではなく、小手先の技術が通用しません。

2020年度から大学入試センター試験にかわる新たな試験がとり入れられます。記述式で答える問題ももりこまれる見こみで、中学入試にも影響が出るかもしれません。

ただ、どのような形式でも、読解力がポイントになることにかわりはありません。選択式でも記述式でも対応できるよう、日ごろから幅広く読書をし、書く練習をしておく必要がありそうです。

 

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大島淳一のプロフィル
朝日小学生新聞の学習欄および受験情報欄のデスクで、編集委員も務める。
専門分野は中学・高校受験の時事問題対策。