STEM教育ってなに? 理数領域の力をいかす

ここ数年の教育の流れをみるとき、世界的に注目されているのが「STEM教育」です。どのようなもので、どう取り組むのでしょうか。埼玉大学STEM教育研究センターの野村泰朗准教授(教育工学)に聞きました。(編集委員・沢辺雅俊)

お茶の水女子大学、アメリカのボストン大学大学院、ニューヨーク大学大学院で学ぶ。現在は明海大学教授。NHKラジオ「基礎英語2」の講師も務める。

知識を活用、課題を解決する

――STEM教育とは何ですか。

理科(Science)、技術(Technology)、工業(Engineering)、算数・数学(Mathematics)の頭文字をあわせたのがSTEM。これらの知識・技能をいかしながら、現実の問題を自分で解決するための力を育むための教育のことです。

プログラミング教育のことだと誤解する人がいるかもしれませんが、プログラミングは数学の一部。STEMの要素にすぎません。

またA(Art・美術)を入れた「STEAM教育」という言葉もありますが、Aの本質は新しい価値観をつくることであって、よりよいものをつくるEにふくまれると、とらえています。

――日本での取り組みは進んでいますか。

日本は世界でも最先端をいく国の一つだと思います。さまざまな教科の知識・技能を総合的に活用する点で、20年ほど前からおこなわれている「総合的な学習の時間」がめざす教育だといっていい。これからはSとMをさらに意識していくべきです。

――学校以外では、どんな取り組みがありますか。

わたしたちの「ロボットと未来研究会」では未就学児から高校生を対象に、ものづくりを通した学習の実践・研究に取り組んでいます。

身近なモノを再現し、新たな価値を加え改良する。たとえば生活を便利にする扇風機をつくってみるのが一例です。「モーターのほかに羽根は何枚か」「どんな配置にするか」など、まずは再現に何が必要かを考えていく。さらに、環境にやさしい「エコ」にするには「つけっぱなしを防ぐためセンサーやコンピューターを組み合わせたら」といった具合に、勉強したことを組み合わせて問題の解決を体感していきます。

習った内容を関連づけて思考

――取り組むときのポイントは?

理科や算数ですでに学んでいることを思い出し、関連づけて解決策を考えようとするのが「かぎ」です。指導する側は極力、教えないこと。自分自身が必死で思い出し考えるなかで、それらの教科をなぜ学ぶのかを理解していきます。

最初は目標をあたえますが、自分から取り組みたい問題に気づき、「何のために」と考えていけるようになることをめざします。

――保護者が家庭で取り組む場合、どのように進めればいいですか。

「STEM教育を実施している団体が近くにはない」などといっているようでは……。ユーチューブをはじめ、インターネットを使えば何でも学べます。

要は「親の背中を見て子は育つ」。子どもに何かをやらせたいと考えるなら、保護者がおもしろがってやって見せることです。何を学ぶのかよりも、なぜ学ぶのか。意欲が大事な時代になってきています。

【STEM教育のタイプ】
大きくヨーロッパ型とアメリカ型にわかれる。ヨーロッパ型は、さまざまな教科を統合して実践的な力を育もうとするもので、日本はこれに近い。アメリカ型は、産業界の要望から、科学技術系の人材を育てようとする面が強いといった特徴がある。

【朝日小学生新聞2019年8月23日 掲載】