算数って将来、役に立つの? 未知の問題を解く力へ

算数や数学は将来、何の役に立つの? こんな疑問を感じる小学生や保護者のみなさんがいるかもしれません。朝日小学生新聞の姉妹紙、朝日中高生新聞で数学のコラムを連載し、数学塾の塾長もつとめる永野裕之さんに算数や数学との向き合い方を教えてもらいました。自身の「道のり」や算数・数学を学ぶときのこつも聞きました。(編集委員・沢辺雅俊)

1974年生まれ。東京大学理学部地球惑星物理学科、同大学院宇宙科学研究所(いまのJAXA)で学ぶ。オーストリアのウィーン国立音楽大に留学。現在は神奈川県大和市の永野数学塾の塾長をつとめ、朝日中高生新聞では「マスマスわかる数楽塾」を連載中。著書に『伝説の入試良問』など

「はやく正確に」…生活に直結

――算数や数学は将来、どう役立ちますか。

算数と数学はひとくくりにできません。算数は「3割引きならいくら安い?」「4人分のレシピで3人分の料理をつくる」といったときも必要で、生活に直結しています。解き方がわかる問題をすばやく正確に解くことが重視されます。

中学受験の算数や数学は大人でも意義を実感していない人が多いですね。「社会人になって使ったことがない。数学は選択科目でいいのでは」という声を聞くこともあります。でも、先進国では数学は必修。期待されるのは未知の問題を解く力です。それには論理的思考力、さらに、ほかの人にわかるように伝える表現力が求められます。

数学で養われる思考力を示したのが左の図。まず表やグラフに図解して「整理」。次に例をイメージする「具体化」、本質をよりすぐる「抽象化」、要素に分ける「分解」、置き換える「変換」をします。この過程を総合的にとらえ、ほかの人に説明する――。こうした力が身につきます。

――宇宙航空研究開発機構(JAXA)の前身機関で研究したり、音楽の指揮を学んだり。経歴と数学はどうかかわりますか。

高校生のころは音楽家か物理学者になりたいと思っていました。5歳からピアノを習い、物理学者のホーキング博士の講演会に行ったりしていました。

大学と大学院で専攻したのが「惑星物理」。指揮については専門家に指導を受けながら、オペラのサークルで指揮棒をふっていました。その後「やはり、音楽をやりたい」とウィーンへ留学。物理や音楽で共通するのは「数」に対する興味。音楽も実はとても論理的で、楽譜を読み解くには論理的思考が必要です。

「なぜ」の姿勢が算数の楽しさに

――小学生が算数(数学)に取り組むときのこつを教えてください。

まずは「定義」が重要。たとえば長方形について聞くと「角ばってるやつでしょ?」と答える子もいますが、正しくは「すべての角が等しい四角形」です。これがおろそかだと、議論がかみ合いません。

次のポイントは問題を解くとき、なぜその公式で答えが出るのかを理解すること。公式や解き方を丸暗記するのはだめです。結果よりプロセス(過程)が大事。自分で「なぜ」と考えて答えを出すほうが楽しいものです。AI(人工知能)が進化するなか、未知の問題に取り組む力が人間には求められています。

保護者はいかにプロセスに目を向けさせるかが鍵。解き方を見て、いきなり「まちがいだよ」と指摘せずに「なぜ、こう思ったの」と聞くようにしましょう。

【朝日小学生新聞2018年8月24日 掲載】