海は先生、恵みも脅威も学ぶ

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逗子開成中学・高校(神奈川県逗子市)

校舎の目の前に広がる太平洋。神奈川県逗子市にある私立の男子校、逗子開成中学・高校は、恵まれた自然環境を生かして、昨年度から新教科「海洋人間学」を設けています。いまの中学2年生が去年から半年かけてつくったヨットの進水式があると聞き、学校を訪ねました。(編集委員・別府薫)

協力と自力、どちらも大事

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先月下旬、校舎の前の砂浜に真新しい5艇のヨットが並びました。2年生280人が1枚の板からつくり上げた力作です。生徒の代表がシャンパンをかけると歓声があがり、進水式が始まりました。

この日は、先輩たちがつくったものも加えて30艇ほどを4、5人のグループごとに1艇ずつ海にうかべました。40キロほどある船体を持ちあげるときは力を合わせて、船の上では自分の力で帆を操ります。

雨が降り出しそうなくもり空でしたが、風はおだやか。思うように船が進まず、沖合でだんご状態になっている集団もありました。糸原佑紀さんは「風がないから方向転換が難しかった」と苦笑い。とはいえ「風を読んだり、帆を操作したり、いろいろなことを考えながら操縦できるのが魅力」と語ります。

牧野裕太さんは、入学前からヨットの授業を楽しみにしていましたが「想像以上だった」と顔をほころばせます。「社会に出てからも一つのものを仲間と協力してつくりあげる力や、船上で状況を判断する力は役立つと思う」

生徒を指導する技術科の内田伸一先生は、ヨット(スナイプ級)の日本代表として世界大会に出場する現役の選手でもあります。中学生は今回もふくめて4回ほどヨットに乗る機会がありますが、安全を最優先に授業を組み立てます。

本格的に取り組みたい生徒はヨット部へ。中学は約80人、高校は16人が所属。高校生はほぼ毎年インターハイに出場し、大学で競技を続ける卒業生も多いそうです。

東大と連携した授業も

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ヨットの授業は30年ほど続く伝統ですが、昨年度から海の環境を総合的に学ぶ新教科「海洋人間学」のなかに位置づけています。東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センターとも提携。津波の変化をコンピューターのシミュレーションで再現して物理の基礎を学んだり、大学の研究者からウナギの回遊について聞いたりしました。

中学3年生になると、逗子湾内で1500メートルの遠泳に挑戦します。地震が発生すると津波が心配されるので、近くの山まで避難する防災訓練にも力を入れています。

中学2年生の社会科の授業では「歴史新聞」をつくります。室町時代に南海トラフ沿いに起きたとされる明応地震について調べた生徒もいたそうです。社会科の片山健介先生は「東日本大震災からも、日本人は海の恵みや脅威と共に生きてきたことがわかります。海について学び、防災意識を持つことができたら、社会人としての力になるはずです」と話します。

2020年の東京オリンピックは、近くの江の島(藤沢市)がセーリング競技の会場。ボランティアなどでかかわりたい、と夢をふくらませる生徒もいます。

【朝日小学生新聞2016年5月22日(日)掲載】