From灘  関西弁の「なあ」はどう訳す?

いま灘の高校3年生は、レイモンド・カーバーというアメリカの小説家の作品を読んでいます。英語の時間で原文を読んでいたので、「じゃ、小説家の村上春樹が訳したものを国語の時間に読んでみよう」というわけです。灘は英語・国語の教員がペアで6年間持ち上がるので、こうした取り組みも比較的簡単にできます。

「同じ作品を異なる言語で読んで何の意味があるの?」と思うかもしれません。でも、「翻訳の価値は?」という問いは、大切な気づきを私たちにもたらします。

考えてみると、翻訳ほど私たちの生活に身近なものはありません。話し言葉を書き言葉に、関西弁を標準語に、ジェスチャーを言葉に、絵画を音楽に……と広げて考えていくと、翻訳が表現すること全般に関わっていることがわかります。

以前、イギリスの翻訳会社が千人の翻訳者に行ったアンケートで、関西弁の「なあ」が世界で4番目に翻訳しづらい言葉として選ばれました。「なあ」は、単なる呼びかけだけでなく、同意を求めたり自分の主張を強めたりするときに使います。「今日はほんまおもんないで、なあ」(今日は本当におもしろくないね)という表現も、背景の場面・状況がわからないと訳しづらいようです。

人工知能による翻訳が進化すれば、翻訳家という職業は消えるのでしょうか。この問いは、きっと古文や外国語を学ぶ意味にもつながってきます。みなさんも小学校で英語を学ぶ意味を深く考えてみませんか。

【朝日小学生新聞2019年7月5日 掲載】