From灘 「言葉と歴史の関係を考える」

言葉と歴史の関係を考える

今年度は高校1年生に、「探究現代文」という授業をしています。先月、この授業用に『「知の理論」をひもとく―UNPACKINGTOK―』(井上志音ほか著、伊藤印刷)という本を出版しました。一般の書店に並びませんが、「どのように知識を学ぶべきか」について深く考えていく教科書です。

この本には、「〈害虫〉の誕生」(瀬戸口明久著)という作品がのっていますが、言葉と歴史の関係を考えるにはうってつけの文章です。京都大学准教授の瀬戸口さんは「害虫」という言葉がいつ生まれたのかを様々な文献から調べ、江戸時代以降に作られた事実を解明しています。これを「ふーん」と読み流すのは簡単です。重要なのは、言葉が歴史のなかで生み出され、私たちのものの見方もその影響を受けていることです。

例えばゴキブリは害虫の代表格ですが、実際に被害を受けた人は多くありません。なぜ人はゴキブリに殺虫剤を向けるのかと考えると、実は「被害を受けたから」ではなく、「世の中で害虫と見なされているから」ではないかという可能性に気づきます。もしそうなら、ゴキブリを害虫と決めつける私たちの見方こそ、かたよったものだといえます。

人間にとって良い/悪いという基準もまた、歴史や社会の影響を受けています。日々変化する社会のなかで、私たちはどのようにものを見るべきなのでしょうか。「探究現代文」を通して、生徒たちは自分のものの見方に向き合っていきます。

【朝日小学生新聞2017年5月28日 掲載】