From西大和 「額や絵馬に残る江戸の数学」

額や絵馬に残る江戸の数学

西大和学園からほど近い大和郡山市に庚申堂というお寺があります。1880(明治13)年、このお寺の境内にイラストのような問題がかかれた「算額」が奉納されました。

図のように、大円の内部にいくつかの小円があります。大円の直径は1尺6寸、甲円の直径は9寸6分です(1尺は約30センチ、1寸は約3センチ、1分は約3ミリ)。乙円、丙円、丁円の直径を求めなさい。

どうでしょう。解けますか。現代の数学(西洋数学)では、中学校で学習する「三平方の定理」を用いて解くことができますが、当時の人々は、江戸時代に花開いた「和算」の累円術(円の中にいくつかの円を内接させたときの円の直径を求める解法)などの解き方を用いました。

江戸時代の庶民は数学が大好きで、学んだことを積極的に発表しました。そして、たのみごとや願いごとを絵馬にして神社やお寺に奉納することと、数学の力がついたことを神様や仏様に感謝することが結びついて、このような「算額」を奉納する文化が根付いたのです。これは江戸時代前半の17世紀から流行し、明治、大正、昭和初期まで続きました。

残念ながら、庚申堂の算額は長年の雨風によって墨がうすくなり、肉眼ではよく見えません。でも赤外線写真にとれば、昔の日本人のロマンを楽しむことができます。

もうすぐお正月。初詣に行く神社やお寺で軒下を見上げてみましょう。200年前の人々の知恵や楽しみがかかげられているかもしれません。

【朝日小学生新聞2016年12月18日 掲載】