From灘 苦手の始まりは前のレベルから
数学の先生をしていると、よくこんな質問を受けます。「うちの子は算数(数学)が苦手なのですが、どうすれば得意になりますか」「どうすれば算数(数学)が好きになりますか」。すぐに得意になったり好きになったりする方法はないかもしれませんが、解決につながる大切な視点についてお伝えします。
15年前、長野市の公文式教室で指導するU先生に、公文式の特長の一つに「学年関係なく進む」があると教えてもらいました。この先生の教室で、入会初日の小学6年生の生徒の様子を見せてもらいました。その生徒は分数計算が少し苦手なようでした。先生は小学校低学年の教材から始め、「分数計算がスムーズでない原因はもっと前の段階にある」とおっしゃいました。
私は「分数計算が苦手なのだから分数計算の練習をもっとすればよいのでは?」と思いましたが、たし算やひき算、かけ算の九九レベルからやり直すことで、分数計算の教材にたどり着くころにはたどたどしかった分数計算がスラスラと解けるようになっていたのです。その生徒は数年後、長野県でもトップレベルの県立長野高校に進学しました。
数学教員として数学が苦手な生徒を見るたびにU先生の言葉を思い出します。「方程式がスムーズでない原因はもっと前にあるのではないか?」「二次関数が苦手な理由はもっと前にあるのではないか?」と。
公文式は高校の数学教員であった公文公さん(1914~95年)が作った教材だそうです。
【朝日小学生新聞2022年11月11日 掲載】