From西大和 「おいしい」でお互いを思いあう

自分の食べているものの感想を相手に伝える「食レポ」は、実際にやるとなかなか難しいです。味をうまく表現できる言葉が見つからないというより、他者に共感を持ってもらえるか不安だからではないでしょうか。

味覚は、見たことや聞いたことなどの感覚とちがって個人的なもので、家族でも共有することが難しいです。だからこそ、作った人は「おいしい?」と聞いてくるのです。

哲学者の鷲田清一さんの本『わかりやすいはわかりにくい? 臨床哲学講座』に、「ともに食べるということが、他者への思いやりと相互の信頼の基礎をかたちづくる」と書かれています。他者が今この味をどのように感じているかに思いをはせることや、作ってくれた人といっしょに食べることで、命の源を食べさせてもらっているという感覚を持てて、信頼関係の基盤となるというのです。

今度からだれかと食事をしている時に「おいしい?」と聞かれたら、ただ味を聞かれていると考えるのではなく、この人は私に思いをはせてくれているのだと感じてください。そして、私に思いをはせてくれてありがとうという意味をこめて「おいしいよ」と答えることで、信頼関係を築いてほしいです。

新型コロナウイルスの影響で外出に制限がある中、家で食事をする機会が増えた人も多いでしょう。こういう時こそ家族でごはんを食べて、「今日のからあげ、いつもよりサクッとしておいしいよ」と食レポすることで、きずなを深めるのはいかがでしょうか。

【朝日小学生新聞2021年5月7日 掲載】