初の東大推薦入試 合格者と母親に聞く 「愛情と体験が意欲を育む」

東京大学が初めて実施した推薦入試の結果が公表されました。大学入試改革のなかで、推薦・AO(アドミッション・オフィス)入試が広がりをみせ、各大学は高校時代の活動など、受験生の個性をこれまで以上に重視するようになるといわれています。活動する意欲や個性はどのように養われるのでしょうか。東大の推薦入試で合格した生徒と、その保護者に話を聞きました。(編集委員・吉田由紀)

学校外の活動をアピール

寺尾昌人さん(東京都立三鷹中等教育学校6年)は法学部に合格しました。
 調査書や論文などの書類による1次選考、個別面接とグループディスカッションによる2次選考を経て、大学入試センター試験の結果(8割以上の得点が目安)とともに総合的に判断されて合否が決まります。
 「グループディスカッションは難民問題の現状と対策がテーマで、リーダーシップをとって提言をまとめることができました。ところが、個人面接では緊張してしまい、手応えは最悪。一般入試に切り替えようと思っていました」とふり返ります。英検は1級を取得しており、「センター試験では9割はとれました」。ベースには高い学力があります。
 4年生(高校1年生に相当)の夏から東京都の事業「次世代リーダー育成道場」でアメリカへ1年間留学。人種差別を目の当たりにしたことから人権について考え、国際機関で仕事をしたいと将来を思いえがき、東大法学部を志望するきっかけになりました。
 帰国後、高校生の職業体験イベントなどを企画するグループを立ち上げるなど、学校外の活動にも挑戦しました。「こうした活動も推薦で評価してもらえるなら、とチャレンジしました」

77人合格、女子や地方が多め

東京大学が推薦入試をとり入れた目的には、多様な学生を集めること、高校での活動を高く評価することなどがあります。
 合格者(77人)のうち女子が4割近くを占め、昨年度の一般入試の女子の比率(前期18%、後期14%)を上回りました。出身校の所在地をみると東京都が26%、東京以外の関東地方が18%、それ以外の地方が56%でした。昨年度の一般入試(それぞれ38%、21%、41%)とくらべると、関東以外の割合が高くなっています。合格者のうち7人が既卒生でした。
 今回の推薦入試について、相原博昭・推薦入試担当室長は「多様性を確保でき、うまくいったと思う。高校の先生や生徒にも積極的に使ってもらえたのではないか」ととらえます。次年度に向けて、100人程度の募集人数や推薦要件、大学入試センター試験での「8割」という目安などを大きく変更する考えはないといいます。
 今春は、京都大学でも推薦型の「特色入試」を初めて実施、9学部で合格発表がありました。すでに発表されていた医学部医学科を合わせ、88人程度の募集に対して292人が志願、合格者数は60人でした(今月下旬に発表される法学部をのぞく)。

母「体験重視、家庭内に学び」

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「生きていることが楽しいと思える大人になってほしいと考え、のびのびと何でもやらせました」。お母さんの真樹さんはこう話します。
 小学1年生のころから熱中したサッカーをはじめ、ピアノや水泳、キャンプなど、本人が興味をもったことはできるだけ体験させたそうです。ただし、ゲーム機は買わない方針でした。
 昌人さんは4人きょうだいの末っ子。編集の仕事をする真樹さん、ユネスコ関連のNPOに勤め海外出張も多いお父さんのもと、家族で本をすすめ合って読んでいたといいます。
 「学童保育のあとの居場所」として公文式の教室に小学校低学年のころから6年生まで通いました。また、お父さんが帰宅後や週末に家での勉強をみたほか、お兄さんたちも受験勉強で暗記事項を確認するときの相手を昌人さんに頼むなど、身近なところに勉強がありました。
 「自分で考えられるように」と真樹さんは日ごろから子どもたちによく質問していました。たとえば「学校で使うから○○ちょうだい」といわれたら、何に使うどんなものなのか説明をうながす、という具合です。
 6年生で進路を考えたとき、母体だった都立三鷹高校がサッカーの強豪校の一つだったことから、三鷹中等教育学校をめざしました。
 中学生になると、英語もお父さんから教わりました。社交的な性格の昌人さんは、電車の中など街で出会う外国人にどんどん話しかけました。力をつけて中学2年生のときに英検2級に合格。中学3年生で留学のプログラムに応募しました。
 真樹さんは「親が存在そのものを認めれば、子どもは安心して自分を愛せるようになり、チャレンジや努力するエネルギーが高まるのではないでしょうか」と話しています。

【朝日小学生新聞2016年3月13日(日)】