今春の中学入試動向 コロナの影響は? 制限減り十分な選択が可能に
新型コロナウイルスと向き合う中で3度目の受験シーズンとなった今春の中学入試。どのような動きがみられたのでしょうか。首都圏と関西地区について、おもな動向や特徴をそれぞれの専門家に聞きました。 (山本朝子、編集委員・沢辺雅俊)
難関復調・大学付属人気 「強気」にもどる
今春の入試で私立・国立中にいどんだ首都圏(東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県)の受験生は約5万2500人(推計速報値)で、前年を上回りました。「コロナに対する制限が解除され始めた影響で、出願校の数などが3年前にもどったと感じる」と進学塾・栄光ゼミナールの中学入試責任者、藤田利通さんはいいます。1人あたりの平均出願数は3年前とほぼ同じ5・1校。志望校の文化祭に行けなかったり、模擬試験を自宅で受けたりした去年の受験生に比べて「今春の受験生は学校選びも実力の把握も十分にできたのでは」。
午後入試を実施する学校や受験者も増えています。東京や神奈川などで2月1日の午後入試に臨んだ受験者数は、同日午前の受験者数の67%でした。複数回の入試については「チャンスが増える一方で、倍率が上がるリスクもある」と藤田さん。たとえば4月から共学になる芝国際中(東京・いまの東京女子学園中)はⅠ類とⅡ類それぞれ5回(一般生・2月)の入試で定員は最大15人。倍率は2・5~149倍に上りました。
大学とつながりがある学校も人気です。2026年度から校名を明治大学付属世田谷中に変更して共学化する男子校の日本学園中(東京)。この4月に入学する生徒が高校3年生のときに明治大学へ7割程度の推薦をめざすとされ、2月1日入試の受験者は前年の9倍に増えました。
関校の倍率が高かったのも特徴です。男子校の開成中(東京)は前年の2・5倍から2・8倍に。共学校の渋谷教育学園渋谷中(東京)第1回は全体が3・7倍(男子2・6倍、女子4・7倍)でした。
日能研関西の森永直樹さんによると、関西地区(京都、大阪、滋賀、兵庫、奈良、和歌山の2府4県)の私立中の受験者(初日の午前入試)は1万7279人。このエリアの6年生の10・01%にあたり、去年の9・74%から「急増」しています。10%台になるのは14年ぶりです。
「コロナ前にもどった。去年は手がたく安全志向だったのが、強気の受験にもどった」と森永さん。例の一つが難関校の志願者数です。去年と比べ、灘中(兵庫)が93人、東大寺学園中(奈良)が65人、洛南高校附属中(京都)が108人増えるなど、コロナ前の水準にもどったといいます。
もう一つの例は「府県またぎ」。県境をこえての受験ももとどおり活発になりました。たとえば帝塚山中(奈良)の総志願者数は去年よりも179人増加。去年は感染リスクをおそれて近場の学校にとどめていたのを、今春は遠くまで足をのばすようになりました。
また「関関同立」とよばれる大学(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)の付属校も、去年なみの人気を継続しています。
では、来年度以降の受験へ向けてどうしたらいいのか。森永さんが注意をうながすのが「隔年現象」のとらえ方です。志願者を増やした学校は翌年、志願者を減らす(またはその逆の)傾向があります。それにともない難度も変化するように思えますが、「中堅校以下は、実は難度はあまり変わらないもの。行きたい学校をしっかりねらってほしい」と話します。「学校説明会やイベントなどコロナによる制限もなくなってきているので、しっかり足を運んで選びましょう」
【朝日小学生新聞2023年3月10日 掲載】