算数のおもしろさ 世界全体を正しく見る力つく

苦手な人にとっては「難しい」「ややこしい」「将来、何の役に立つの?」と思われがちな算数。算数や数学の本をたくさん書いてきた、数学エッセイストで帝京大学教授の小島寛之さんは「世界の見方を変えてくれる、一生の財産」だと話します。(松村大行)

仮説を立てて考える 統計を読み解く訓練を

複雑な計算が必要で、中学受験でも問われる――。そんな算数がいやになる気持ちは、小島さんも「よくわかります」。

もっとも、小島さんが考える算数の本当のおもしろさはそこにはありません。それは「世界の新しい見方を教えてくれること」だといいます。

たとえば、速さについて考えるときに、「旅人算」という計算があります。「100メートルの道の両はしからAさんが秒速3メートル、Bさんが秒速2メートルで動くとき、何秒で出会いますか」といった問題です。

計算の一例としては、「100÷(3+2)=20(秒)」となります。このとき、「3+2=5」が表しているのは何でしょう。それは、仮にAさんが、自分は止まっているとみなすなら、Bさんの動きがどう見えるかを表した速さ(この場合は秒速5メートル)です。「相対速度」と呼びます。

相対速度は、物理学で欠かせない「世界の見方」です。「物理学では動いている世界での物質の運動を、止まっている世界から見るとどうなるかなどを考えます。『相対性理論』をとなえた物理学者のアインシュタインも、同じように世界をとらえていました。算数はこうして、高度な物理ともつながるのです」

足の本数をたよりに、ツルとカメの数を求める「つるかめ算」という計算があります。まず「すべてツルだったら……」と「仮説」を立てて考えます。すると「カメがこれだけいないと足の本数が合わない」とわかり、問題が解けます。

「まず仮説を立てて考える『世界の見方』は、すべての科学の基本です」

算数では統計も勉強します。これも世界を数字でとらえる「見方」の一つ。「図やグラフをいやがらず、興味深く見るのが大切です」

新型コロナウイルスのニュースでも、さまざまな図やグラフが出てきます。読み解くうえでのポイントは、「時間ごとの変化」が表されているかどうかだといいます。

たとえば感染した人がいる国をぬり分けた世界地図は、ある一瞬の出来事を切り取った情報です。一方、感染者数の移り変わりを示すグラフでは、過去もふくめた、ちがう時間の出来事を表しています。

「同じ棒グラフでも、増えた数を表す場合と総数を表す場合があります。そこを見まちがえると、起きていることを正しく理解できません。小学生のうちに読み解く訓練をしましょう」

美しい音楽や絵画にたくさんふれると、作品の良さを見ぬく感覚が身につき、人生が豊かになります。小島さんは「算数や、中学校から習う数学も同じ」だといいます。「算数で学べる『世界の見方』は、一生の財産になります。点数がとれないからときらいになるのは、とてももったいないです」

【朝日小学生新聞2020年4月17日 掲載】